学生時代に所属していたオーケストラでは、年3回の定期演奏会がありました。ひとつの演奏会が終わり、多くのお客さまの熱気とたくさんの花束に囲まれて打ち上げ、深夜の部室に片づけに戻ると、そこには決まって、次の演奏会に向けて譜面をさらいはじめる熱心なメンバーらの姿がありました。終演の余韻にひたりつつ、新しい旋律の断片を耳にしながら、たとえどのように盛り上がろうとも、あるいは落ち込もうとも、時間は粛々と流れ、自分たちはその流れに運ばれていくこと。そして、終わった演奏会での学びは、もれなく次につながっていくことを感じていました。
生きることの終わりに何があるのか? いのちは、この世から消えてどこへ行くのか? いま生きている私たちは、だれもその答えを知りません。
古代より、死後の世界を描いた作品は数知れず、多くの人々が、この世を去ってからの幸福と安泰を願って努力を惜しまず、時には「不老不死」や「永遠のいのち」を求めたりもしました。生と死をめぐるテーマは、とめどもなく膨大で広範で深く、どんなに頑張っても語り尽くせないでしょう。
この、だれもが必ず経験するけれども、まだだれも経験していない事象。人間には「未知のものが怖い」という本能があるが故に、時には、いのちの終わりを忌み嫌ったり、覆い隠したりしたくなるのでしょう。わからないものは、わからない。でも、できることなら、未来に対して、たとえそれがいのちの終わりという未来であったとしても、そこに一筋の希望の光を、見出だしたいものです。
私たちの1stプロジェクトでは、いのちの終わりをだれもが迎える摂理として受け止め、旅立つ人にプレリュードを奏でたいと思います。安穏な旅立ちばかりではないでしょう。それでも、終わりにはいつも、輝きに満ちた次が内包されている。その原理原則を胸に、スポットライトのあたる階段を一歩一歩上っていくように、このだれもが通る道を、慈しみたいと思います。
3月25日のブランドリリース、どうぞご期待ください。柿田京子でした。
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